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人生を振り返る時、人は大きな出来事ばかりを思い出すものだ。
合格、不合格、失恋、成功──そんな節目こそが自分を形づくったのだと信じがちだ。
だが、やんまという青年の青春はそうではなかった。
彼の大学生活を動かしていたのは、
誰にも語られない、名もない出来事たちだった。
昼過ぎに起きる癖。
友達の部屋で食べた安い菓子パン。
原付で走った曇り空の帰り道。
そして、なぜか妙に印象に残る他人の泣き顔や、意味不明な会話の断片。
そんな、なんてことのない瞬間が、彼の青春のほとんどを占めていた。
そして、二十年経った今になって思うのだ。
あの頃の彼は、情けなくて、面白くて、そして確かに一生懸命だった。
やんまは大学進学と同時に一人暮らしを始めた。
そのスタートは決して立派ではない。
理想と現実の境目を知らない若者が、狭いワンルームに放り出されただけのことだ。
だが、その狭い部屋には、彼の未来が転がっていた。
自堕落も、友情も、失敗も、希望も、全部そこで育っていく。
この物語は、やんまが“何者でもなかった頃”の話だ。
就職が決まり、人生の方向が一応決まるよりずっと前。
彼が迷いながら、笑いながら、時にしくじりながら、
不器用に青春をくぐり抜けていた頃の物語である。
さて、そんな彼の大学生活の“最初の事件”は、
夢の一人暮らしの数日後に始まった。
近所のゲーム屋で働くことになったのだ。
ゲームが好きで、自由が好きで、うまくやれる気がしていた。
しかしこの選択こそ、やんまの人生に最初の“理不尽”を運んでくることになる。
それを彼はまだ知らない。